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経済・市場
コモディティ価格の高騰は続くのか
リサ・ トンプソン
株式ポートフォリオ・マネジャー
ダグラス・ アップトン
株式投資アナリスト
スティーブン・ グリーン
マクロ・エコノミスト (アジア担当)

現在のコモディティ価格の不安定さは、電気自動車のバッテリーやステンレス製品の主要部品であるニッケルの値動きに象徴されています。LME (ロンドン金属取引所) は3月8日、ニッケル価格が2倍に急騰したことを受けてニッケルの取引を一時停止しました。16日の取引再開後には、急激な価格変動を阻止する値幅制限が設けられました。


これは、ロシアのウクライナ侵攻に起因する世界経済の混乱の一例にすぎません。ロシアは世界のニッケル供給の約2割を占める主要産出国です。それを失うという懸念が市場の動揺につながり、需要家はほかのニッケル供給源を求めて奔走しています。


ウクライナ紛争でコモディティ価格が高騰

ロシアが主要産出国であるコモディティ価格の推移 (年初来変化率) 

Russian Exposed Commodity Prices

2022年3月16日現在。
出所:LME、Refinitiv Datastream、米国農務省、キャピタル・グループ

2月24日のウクライナ侵攻以来、コモディティ価格は、小麦、原油、天然ガス、アルミニウム、パラジウム、銅などロシアとウクライナで産出されるものを中心に急上昇しています。


ただし、コモディティ価格は侵攻以前から上昇基調にあり、1980年代前半以来のインフレ圧力の高まりにつながっています。ここで重要なのは、この価格上昇は持続可能か、という問題です。


ポートフォリオ・マネジャーのリサ・トンプソンは「これまでの急上昇は、短期の見通しとしては持続しないとみる。ただ、1年前との比較では大幅に上昇しており、持続的な上昇トレンドにある」と考えています。


「長期的には、需要拡大や供給不足のほか、ウクライナ紛争や米中対立に象徴される脱グローバル化 (deglobalization) の潮流など、さまざまな要因で価格は高止まりするだろう。自由で開かれた貿易が後退する世界では、物価は上昇する」とトンプソンは予想しています。


金属産業は再び輝くか


投資の観点からは、金属・鉱業セクターにとって明確なインプリケーションがあります。このセクターは、2008年の世界金融危機前後の価格急騰を除けば、過去十数年にわたって注目されることはありませんでした。


30年以上にわたってコモディティ市場を見ている株式アナリストのダグラス・アップトンは「金属・鉱業セクターは長年にわたって過小評価されており、直近の鉱山会社の株価上昇を考慮してもまだ割安」と指摘します。アップトンは、2015年以降投資不足の状態が続き、コモディティ価格は今後数年にわたり高止まりすると考えています。鉱山の新規開発にかかる時間の長期化がこの問題に拍車をかけています。



リサ・トンプソン 株式ポートフォリオ・マネジャー。経験年数33年。現職以前は株式アナリストとしてラテンアメリカ、エマージング・ヨーロッパ、西アジア、アフリカの調査を担当。入社以前は、ゴールドマン・サックス(ニューヨーク)のアナリスト、野村総合研究所(ニューヨーク)のアナリスト及びクオンツアナリストとして勤務。CFA協会認定証券アナリスト。

ダグラス・アップトン    株式アナリスト。グローバルの金属・鉱業を担当。経験年数33年。現職以前は、カナダの銀行セクターも担当し、欧州のリサーチ・ディレクターを務めた。入社以前は、J.P.モルガン・アセット・マネジメントに勤務。それ以前は、WMCリソーシズで、オペレーション、財務、マーケティングなど複数の部門を経験した後、HSBCにおいてコモディティ・リサーチ担当のヴァイス・プレジデントとして従事。

スティーブン・グリーン  マクロ・エコノミスト。アジアを担当。経験年数17年。入社以前は、スタンダードチャータード銀行(北京、上海、香港)において中国語圏経済リサーチヘッドを務めた。それ以前は、英国王立国際問題研究所においてアジア・プログラムを担当。


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