ESG
キャピタル・グループが実践する企業とのエンゲージメント

7 MIN ARTICLE

キーポイント
  • ESGスコアの低い企業をポートフォリオから単に排除するよりも、そうした企業との継続的なエンゲージメントがより強力なツールになりうる
  • 投資家、企業、環境にとって有益となる経営方針を支持
  • 徹底したファンダメンタルズ調査を実施し、ESGに関する分析を投資判断に反映

キャピタル・グループでは、ESG(環境、社会、ガバナンス)は運用プロセスに完全に組み込まれており、個別の運用戦略と位置付けてはいません。個々の課題にとどまらず、すべての保有銘柄をESGの観点から評価することによって、事業の持続的な成長が見込まれる企業の発掘に注力しています。


キャピタル・グループの運用プロセスにはESGが体系的に組み込まれています。ESGの課題を特定・分析するプロセスは密接に関連しあう3つの要素で構成されます。アナリストは、セクターごとにESGの最重要課題を特定します。また、複数の外部評価機関のESGデータを活用してポートフォリオをモニタリングし、重大なESG課題に直面している企業を特定します。そして、経営陣との継続的なエンゲージメントを実施します。これら3つの要素は、互いに強化しあい、持続的に投資判断を精査するサイクルとなっています。


キャピタル・グループの投資判断の基礎となるのは、徹底したファンダメンタルズ調査です。企業経営陣に対する積極的なエンゲージメントはその一部で、数十年の長期にわたって実施されることもあります。綿密な調査と分析に基づく長期投資の視点は、企業との生産的な関係を構築し、経営陣へのアクセスと信頼の獲得につながります。こうした立場から、キャピタル・グループは企業に対して、経営戦略においてESG課題を考慮するように働きかけを実施します。ESGスコアの低い企業をポートフォリオから単に排除するよりも、そうした企業へのエンゲージメントはより強力なツールになりうると考えます。キャピタル・グループは、経営陣にとって貴重な対話のパートナーとして、企業のESG課題へのアプローチに対し支援と助言を行うだけでなく、異議を申し立てることもあります。経営陣は、私たちの目的に対する真摯な姿勢を理解し、キャピタル・グループとのエンゲージメントを互いの利益になるものと考えています。


イメージ・エンゲージメント・サイクリック・チャート

たとえば、私は石油・ガスセクターを20年以上にわたって担当しています。ある石油会社が新たなCEOを任命した際、私はすでに彼のことをよく知っていました。ESGに関する事業戦略を策定する初期段階で、彼は私に意見を求めてきました。私は、同僚数名と彼のオフィスで、気候問題をはじめとする幅広いESGのテーマについて、有意義な議論を実施しました。そのCEOは、私たちが彼と同様に、次の四半期や1年ではなく、はるかに長い投資期間を視野に入れていることを高く評価してくれました。


その後、同社が再生可能エネルギーを重視する長期戦略とESG課題に対する新たなアプローチを公表した際、同社は新たな事業モデルの策定に寄与した重要な対話のパートナーの1社としてキャピタル・グループを挙げました。


Man at construction site
現地調査は遠く離れた土地で行うこともある(2016年、アゼルバイジャンにて)。

キャピタル・グループはお客様を第一に考え、投資先企業が長期的に成長と改善を続け、競争力を維持できるかどうかを重視しています。そして、持続可能な事業計画と将来を見据えた経営哲学を支持しています。そうした企業は多くの場合、ESGを組み込んでいます。たとえばエネルギー企業に対しては、再生可能エネルギーへの転換を進めるよう働きかけており、その動向を注視しています。エネルギー転換は市場のニーズに合致しており、投資家だけでなく企業や環境にとっても有益であると考えます。もちろん、こうした投資によって企業が得る可能性がある利益についても継続的に精査していきます。


経験の価値


キャピタル・グループには、平均14年の経験を有する200名以上のアナリストと、同27年の経験を有する100名以上のポートフォリオ・マネジャーが所属しています(2020年12月末現在)。一方、企業のCEOの任期の中央値は5年に過ぎません(出所:Strategy&、「2018年CEO Success調査」)。経営陣とのエンゲージメントについては、相手が小規模なスタートアップであれ、グローバルな大企業であれ、その都度議論内容を他のアナリストと共有し、文書化し、将来の議論の際に参照します。キャピタル・グループでは、業界、企業、地域、市場に関する知識の強化に継続的に取り組んでいます。


経営陣との双方向のエンゲージメントは、株主代表として議決権を行使する際に考慮するポイントともなります。キャピタル・グループは議決権行使において、蓄積した知識だけでなく、規模も活用します。キャピタル・グループは、企業の大株主であることが多いため、議決権行使は高い影響力を持ちます。株主であることは責任を伴うものであり、議決権行使は、意見を伝えて影響力を行使するための直接的な方法となります。


キャピタル・グループは、特定の産業全体について画一的な投資判断をしないようにしています。どんな企業やセクターであっても、単一の問題に基づいて投資判断を下すことはできないと考えるからです。たとえば、環境を重視する一部の投資家は化石燃料セクターの企業への投資を回避することもありますが、キャピタル・グループでは環境問題に取り組み「エネルギー転換」に一貫したアプローチをとる石油・ガス企業への投資は継続しています。こうした企業とのエンゲージメントを通じて、化石燃料への依存度が低くても世界のエネルギー需要を満たせるような未来の形成に貢献することができると考えています。別の事例では、たばこ産業全体を投資対象から排除するのではなく、危険性のより低い製品を開発する企業に対しては、その取り組みを促しています。


同様に、気候変動に配慮するすべての企業に社会・ガバナンス関連の課題が存在しないわけではありません。環境を重視する投資家にとって、風力発電、太陽光発電、電気自動車など気候変動に配慮した産業は魅力的ですが、キャピタル・グループはそうした企業が社員や株主をどのように扱っているかを精査し、その結果に基づいて投資を行っています。


電力会社、資本財メーカー、鉱山企業など、ESG課題について徹底的に検討するべき産業も存在します。実際、アナリストは各セクターのインベストメント・フレームワークを構築する過程で、多くの企業と協力して、ESGの最重要課題を特定しています。課題のある一部の企業や産業を単に投資対象から排除し投資を回避するだけでは変化を促すことはできず、現状維持にとどまるでしょう。


キャピタル・グループの運用プロセスには、複層的な調査と継続的なエンゲージメントが欠かせません。経営陣と協働することによって、長期的にはよりポジティブな影響を与えることができると考えます。


Aerial view
投資先候補を徹底的に調査(2018年、オマーンにて)。

議決権行使


経営陣との双方向のエンゲージメントは、株主代表として議決権を行使する際に考慮するポイントともなります。キャピタル・グループは議決権行使において、蓄積した知識だけでなく、規模も活用します。キャピタル・グループは、企業の大株主であることが多いため、議決権行使は高い影響力を持ちます。株主であることは責任を伴うものであり、議決権行使は、意見を伝えて影響力を行使するための直接的な方法となります。


キャピタル・グループではコーポレートガバナンスに関する確固たる方針を定めており、環境問題や企業倫理といった重要な懸念事項に関する見解を策定・議論することに多大な労力を注いでいます。2020年には、ポートフォリオ・マネジャーやアナリストによる企業経営陣との面談回数は2万回を超えました。また、17名のガバナンス・アンド・プロキシー・チーム(GAP)、14名のESGチームが、ESG関連トピックについて個別に400以上の企業とエンゲージメントを実施しました。


こうした議論は、調査を目的とする企業訪問や1対1での面談とともに、議決権行使そのものよりも効果的なことがあります。舞台裏での継続的なエンゲージメントを通じて、キャピタル・グループは自らの立場を明確化し、議案の提示前からその内容や文言に影響を与えることができるのです。


経験豊富な専門家による判断


キャピタル・グループはアクティブ運用で世界最大級の運用会社として、企業経営陣へのアクセス以外にも強みを有しています。パッシブ運用のインデックスファンドとは異なり、キャピタル・グループのファンド・マネージャーは自らの体験に基づいて投資判断を下すことができます。多くのパッシブ運用が人間の判断を排除するなかで、キャピタル・グループが実施するケースバイケースできめ細かいアプローチは特に重要になると考えます。ESGに対する戦略的で具体的なコミットメントが持続可能な競争力につながると考えられる企業には、投資を増額することもあります。逆に、ESGの進展への有意義なコミットメントが見られない企業への投資は回避することができます。キャピタル・グループの運用アプローチは、変化に応じた保有銘柄の入れ替えができないインデックス投資に対して、投資家の皆様が一歩先を行くための一助となるものです。その運用アプローチは、他社より先に課題を特定し、他社が見逃している投資機会を発見することにつながっています。


特筆すべきは、キャピタル・グループでは企業に対する判断が固定的ではない、ということです。ESGスコアが低くても、有意義な改善に向けた取り組みを強化している企業があれば、その変化が企業価値を高めると判断して投資する場合があります。また、第三者評価機関によるESG評価が高くても、キャピタル・グループの評価とは一致しない場合があります。


キャピタル・グループは、企業の経営陣だけでなく、社員、競合他社、サプライヤーとも時間をかけて対話を行います。こうしたやり取りを通じて、企業の内情や幅広いステークホルダーについての理解を深めています。


最近の事例では、ある有名な小売企業についての現地調査でサプライチェーンと利益率の持続可能性に疑義が生じたため、投資を回避したことがあります。その企業は第三者評価機関から高いESG格付を得ていましたが、同社のサプライチェーンに関するその後の報道などによって、キャピタル・グループのアナリストのアプローチが正当であったことが裏付けられました。


企業の過去の失敗によって経営陣が総入れ替えとなったことが、将来のポテンシャル改善につながることもあります。キャピタル・グループは、企業の変革期を分析するなかで、新経営陣との対話を通じて今後の行動に影響を及ぼすことができます。


隠れた落とし穴をすべて見つけることは非常に困難ですが、粘り強い調査がなければ、1つも見つけられないはずです。見逃してしまう投資機会もあるかもしれません。それでも、広範囲にわたる調査によって、他の有望な投資先を発掘することができていると確信しています。


キャピタル・グループは90年以上にわたり長期投資を重視してきました。長期投資においては、将来を見据えた事業モデルと、ESGへの思慮深いアプローチを有する企業を発掘することが必要となります。そうした企業に対して自らの影響力を行使し、企業や産業全体の継続的な改善を促進することを目指しています。企業と長期にわたる関係の構築や、継続的なエンゲージメントの実施などを通じて企業に積極的に関与し、投資家の皆様の人生をより良くすることに貢献できるよう努めます。


 


特に明記がない限り、すべてのデータは2020年12月現在のものです。


キャピタル・グループでは、株式に関しては、運用および議決権行使に係る投資判断を3つの株式運用部門が独立して行います。債券に関しては、グループを横断して債券運用部門が調査・運用を行いますが、株式に類する性質を持つ有価証券に関しては、3つの株式運用部門のいずれかに代わり、債券運用部門が調査・運用を行います。




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