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日本経済見通し:世界的な景気減速が予想されるなかで投資機会を探る
アン・ ヴァンデナビル
マクロ・エコノミスト
キーポイント
  • 世界的な景気後退が予想されるなか、日本では観光産業の回復により貿易赤字が縮小し、わずかながら円相場を下支えする可能性がある
  • 昨年12月に実施された日銀の政策調整は、資金調達コストが世界中で高止まりしている傾向を裏付けた。日銀が今後金融政策の正常化に着手するか、あるいはテクニカルな調整を継続するのかについては、マクロ経済のファンダメンタルズ (経済や企業の基礎的条件) による
  • DX (デジタルトランスフォーメーション)、GX (グリーントランスフォーメーション) 、防衛力強化など、長期的なトレンドから恩恵を享受し得る企業に大きな投資機会がある

日本が新型コロナウイルスとの共存という厳しい現実を受け入れるなか、外国人観光客の受け入れ再開と入国制限の大幅な緩和は企業にとって朗報です。しかし、世界は成長鈍化や地政学的リスクといった喫緊の課題に直面しており、コロナ禍前の日々に戻るには長い道のりが必要かもしれません。


本稿では、キャピタル・グループのマクロ・エコノミストであるアン・ヴァンデナビルが、日本経済の見通し、サプライチェーンの再編がもたらす恩恵、そして今後数年間に見込まれる投資機会についての見解を述べます。


世界経済の減速が懸念されるなか、日本経済の見通しをどう見ていますか


世界経済が大幅に減速すると、輸出に依存する日本が景気後退を回避することは難しいかもしれません。中国の景気低迷、世界的に長引くインフレ、欧米の利上げが相まって、日本の景気の重石となる可能性があります。


2022年10月に入国制限を大幅に緩和し、外国人観光客の受け入れを再開した点は大きなプラス材料です。私の試算では、これだけで実質GDP (国内総生産) 成長率を0.5ポイント、中国人旅行者に対する検疫が課されなくなれば最大で0.8ポイント押し上げる見込みです。2019年のピーク時には、訪日外国人旅行消費 (インバウンド消費) 額は約4.8兆円に上り、同年の訪日外国人旅行者数は過去最高の3,188万人に達しました。*1


ただし、エネルギー価格の高騰や経済活動の鈍化が、世界の旅行需要を抑制する可能性があります。それでも、予想される観光産業の押し上げ効果は貿易赤字の圧縮に寄与し、わずかながら円相場を下支えする可能性があります。


グローバルサプライチェーンでは大きな変化が起きています。日本はその恩恵を受けることができるでしょうか


地政学的リスクが高まるなか、日本では経済の生命線を確保するためにサプライチェーンの強靭性を高める取り組みが進んでいます。経済安全保障推進法が成立し、重要な資源とサービスを特定国に過度に依存する企業への政府の関与が強化されました。この法律が今後数年間のサプライチェーンの大幅な再編の端緒となり得ると考えています。


*1. 出所:観光庁、ジェトロ(日本貿易振興機構)



アン・ヴァンデナビル  マクロ・エコノミスト。米国および日本を担当。経験年数22年。TAP (ザ・アソシエート・プログラム:社内研修生制度) を通じてキャピタル・グループに入社し、様々な部門で業務経験を積む。全米企業エコノミスト協会メンバー。


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