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ESG
航空産業の脱炭素化
シェリル・ ウィルソン
ESGシニア・マネジャー
キーポイント
  • 空産業の脱炭素化計画は今後も強化される見通し
  • 新燃料や航空機の最先端技術を通じて、二酸化炭素排出量の大幅削減を見込む
  • 低炭素または脱炭素燃料への需要は、規制や機体の進歩により今後も拡大する可能性が高い

持続可能な航空燃料 (SAF) の活用を通じて二酸化炭素排出量を削減する、業界全体での取り組みにもかかわらず、温室効果ガスの排出量をネットゼロにする道のりは依然として険しい状況です。弊社グループのESGチームは、2050年にかけての脱炭素化への道筋としてさまざまなシナリオを検証し、規制リスクや投資機会を評価しました。


航空産業は現在、世界の人為的な二酸化炭素(CO2) 排出量全体の約2.1%を占めています*1が、旅客の航空輸送需要が増加し続けているため、今後数十年間にCO2排出量が最も急増する原因の1つになると予想されています。*2


ネットゼロを目指す国が増える中で、航空産業のバリューチェーンに属する企業にとって、低炭素化が急務となっています。この数年間を振り返っても、北米および欧州を拠点とする航空会社の多くがCO2排出量をネットゼロとする目標を掲げましたが、低炭素化を実現するための選択肢は依然として限られています。持続可能な航空燃料の開発と採用はまだごく初期の段階にあり、新しい航空技術が商用化されるのはまだ10年以上先になる見通しです。


航空会社は脱炭素政策リスクの矢面に立つとみられる一方で、航空機や燃料のメーカーにとっては低炭素化のオプションを提供するという事業機会があるかもしれません。


現行規制は脱炭素化を十分に推進しているか


航空産業が今後数十年間で気候変動への影響を大幅に低下させるためには、現在の規制では十分ではありません。国際民間航空機関による「国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム」は、国際線のCO2排出量を2019年水準比で横ばいにとどめることを目指しているに過ぎません。またこれを実現するには、大部分をカーボン・オフセット*3に頼ることになり、他の業界が取り組む大幅な排出削減とは著しく対照的です。さらに、このスキームは2027年までは任意に過ぎません。


100ヵ国以上が自主的に参加しているとはいえ、これは国際線フライトの4分の3を占めるに過ぎず*4、中国などの巨大な成長市場は第1フェーズには参加していません。2060年までにカーボンニュートラルを実現するとの公約にも関わらず、中国政府も国営航空会社も国内線または国際線に関する公約を発表していません。


航空産業の脱炭素化はどう実現するのか


これまで、排出量を削減する道筋を評価するうえで、コンサルティング会社や業界団体によるさまざまな予測やシナリオが検証されてきました。そこから導き出された結論として、排出量削減の大部分は新燃料や航空機の新技術によって実現すると予想されています。2050年にBAU (Business As Usual:従来どおり)  シナリオ比で2050年までに予想されるCO2排削減出量のうち、約80%以上は液体水素燃料に代表されるSAFの使用と航空機の最先端技術の組み合わせで達成されるとみられます。*5


1. 出所:航空輸送行動グループ (Facts & Figure、2020年9月)


2. 出所:国際クリーン輸送協議会 (Brandon Graver, Ph.D.、Kevin Zhang、Dan Rutherford, Ph.D “CO2 emissions from commercial aviation” 2019年9月)


3. 可能な限りCO2排出量の削減努力を行い、残りについては排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方


4. 出所:国際航空運送協会


5. 出所:国際エネルギー機関、オランダ航空宇宙センター、ノルウェー船級協会、ミッション・ポッシブル・パートナーシップ、航空輸送行動グループ、ブルームバーグNEF



シェリル・ウィルソン ESG シニア・マネジャー。経験年数11年。入社以前は、カルバート・リサーチ・アンド・マネジメントにおいてVP シニアESG アナリスト、ブルームバーグにおいてアナリストとして勤務。


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