議決権行使原則


原則

当社は、 私的・公的年金基金、金融機関などを含む日本の顧客向けに投資運用サービスを提供しています。当社グループでは、議決権行使を当該運用サービスの重要な要素の一つと捉えており、そのため、当社グループが議決権を行使する権限を有する顧客の運用口座において保有する証券に係るすべての議決権を、当該顧客の最善の利益のために行使するよう努めます。この議決権行使に関する原則及びプロセス(以下、「議決権行使原則」)は、当社グループの顧客の最善の利益のために議決権を行使するよう策定されています。 

サマリー

当社グループでは、受託者責任として顧客の最善の利益のために行動します。当社グループでは、投資先企業への議決権を顧客の運用口座における重要な資産と捉え、議決権行使をエンゲージメント及び運用プロセスの重要な一部分と考えています。投資先企業の事業内容や経営陣の評価、投資家への対応状況等への深い理解に基づき、議決権を行使します。年次の株主総会議案の精査(経営陣との対話も含む)に加え、様々なガバナンスや議決権行使に関する課題を年間通じて議論し、その際には長期的な株主価値の最大化を目的とします。

当社グループでは、各種議案に対する当社の原則的な対応を示し、分析及び意思決定のための重要な枠組みを定める議決権行使ガイドラインを策定しています。但し、当該ガイドラインは網羅的ではなく、すべての潜在的な議案に対応するものではありません。また、各議案に関するすべての事象や状況を考慮することができるように、柔軟な対応を行うことを認めています。その結果、各議案に対する行使内容は、各議案固有の状況を考慮して個別に判断されます。上述の議案の精査プロセスは、企業の事業、経営陣及び経営陣と株主との長期的な関係についての当社の理解や認識を反映するものです。議決権行使原則は、必要に応じて、少なくとも年1回、議決権行使委員会及び投資委員会により見直され、更新されます。

基本方針として、外部環境や取引関係に影響されず、客観的な視点で議決権行使の判断を行います。また、Institutional Shareholder Services (ISS)、Glass Lewis & Co.等、議決権行使助言会社の助言には原則として従いません。自社の議決権行使、ガバナンスおよび役員報酬に係る調査活動に加え、ケース・バイ・ケースでこれらの議決権行使助言会社の調査を活用する場合はあります。議決権行使助言会社による情報提供に利益相反等の懸念がないか定期的に評価し、必要に応じて適切なガバナンス委員会に報告します。



プロセス

議案の精査及び行使プロセス

当社グループは顧客のすべての議決権を行使するよう努めますが、特定の状況においては、議決権を行使することに伴う不利益が顧客の利益を上回るため(当社が株式売買の即時性を維持したい場合に議決権行使がシェア・ブロッキングに繋がる可能性がある時など)、議決権を行使しない場合があります。また、一部の国の規制当局は、議決権行使数に特定の上限を設けることを条件として、当社グループに投資上限の緩和を認めています。そのような場合、議決権行使数の上限を遵守するため、当社グループでは、資産額に応じた比例按分により、すべてのファンド及び顧客口座において議決権を行使します。加えて、顧客の指示によるレンディング・プログラムを通じて貸し出されている証券に係る議決権については、当社に議決権行使権限がなくなるため、行使しません。

当社グループのグローバル・スチュワードシップ・アンド・エンゲージメント・チームは、各議案をレビューし、招集通知に記載された議案内容の要約を作成します。通常、担当アナリストは、各投資先企業の議決権行使について、行使内容の推奨を行います。定型的な議案については、グローバル・スチュワードシップ・アンド・エンゲージメント・チームが助言を行い、これを担当アナリストが精査する権限を有します。状況に応じて、プロキシー・コーディネーター(コーポレート・ガバナンス及び議決権行使について深い経験を有する運用担当者)は、適切な投資判断の範囲内で追加的な推奨を行うことがあります。議案及び行使内容の推奨は議決権行使委員会(運用担当者などで構成)に提供され、議決権行使委員会が最終的な意思決定を行います。このように議決権行使の過程において、複数の視点で検討を行うようにしています。

当社グループでは、株式部門ごとに議決権行使委員会を設置し、各株式部門に所属する運用担当者によって構成されています。議案内容の要約と議決権行使の推奨は該当する議決権行使委員会に共有され、最終的な議案判断に活用されます。このため、複数の株式部門が同一の企業に投資している場合、株式運用部門ごとに議案判断が異なる場合があります。株式部門内では通常同じ議決権行使の推奨が適用されますが、個別のファンドの運用目的や戦略によって異なる議案判断を行う場合があります。

スペシャル・レビューのプロセス

アナリストが議案に関する行使内容の推奨を行ううえで個人的な利益相反がある場合、当該アナリストは、その推奨とともに当該利益相反の内容を開示しなければなりません。また、議決権行使委員会のメンバーが議決権を行使するうえで個人的な利益相反がある場合、当該メンバーは、当該利益相反の内容を適切な議決権行使委員会に開示しなければならず、当該議案に関する議決権を行使してはなりません。

当社グループでは、利害関係者を1) 当社や当社グループの顧客、2) 当社や当社グループとの重要な取引先、3) 当社や当社グループの役員が取締役を兼務している企業と定義します。利害関係のある投資先企業に係る議決権を行使すること、利害関係者が提起した株主提案について議決権を行使すること、利害関係者が特定の立場を公に支持している議案や当社グループが特定の立場を取るよう顧客から働きかけられている議案について議決権を行使する場合、当社グループでは、顧客の最善の利益のために各議案を精査し、これらの利害関係を考慮せずに判断します。このような場合の議決権行使内容の判断については、当社グループ全体にわたるベスト・プラクティスに沿って、後述のスペシャル・レビュー・コミッティ(「SRC」)が、意思決定プロセスに不正な影響が及んでいないかを確認し、必要に応じて適切な措置を講じます。SRCが必要と判断した場合には、独立の第三者に議決権行使判断を委託する等の利益相反を回避するための措置を講じます。SRCは、当社グループの運用部門及び法務部門のシニアな担当者で構成され、営業部門の担当者を含みません。

具体的には、キャピタル・グループ・カンパニーズ・インク(当社の間接的親会社)傘下のすべての会社にわたる運用資産残高の0.25%以上を占める顧客は、「利害関係顧客」とみなされます。当社グループでは、各議案を精査し、投資先企業、株主提案の提案者または特定の提案に対して既に支持を表明しているものが利害関係顧客に当たらないかを事前に確認します。利害関係顧客が関与する議案に関する行使内容が当該顧客に不利な場合には、利害関係顧客に有利となる不当な影響があったとは想定されませんが、行使内容が利害関係顧客に有利な場合には、SRCが行使内容、行使内容を推奨する根拠、顧客との関係に関する情報やその他の関連情報を検証します。SRCは、行使内容が当社グループの顧客の最善の利益となったことを確認できるよう、意思決定プロセスに不正な影響が及んでいないことを、関連する情報を精査して検証します。この検証に基づき、SRCは、当該行使内容を変更、もしくは別の行動を取るよう決定することがあります。

上記以外の議案について、事実や状況から追加の精査が必要と考えられる場合には、SRCに意見を求めることもあります。

米国以外の投資先企業への議決権行使

米国以外の国の企業への議決権行使にあたり、株主総会や関連する議案の情報開示が不足している場合があります。当社は十分な理解の上で議案判断を行うべく出来るだけ情報収集に努めますが、十分な情報が得られない場合、投資家にとって有益な情報開示を促すために、通常、このような議案に反対行使を行うことを検討します。

また、一部の国では株主総会前の一定期間、投資家の保有株式の売却を制限が行われることがあります。流動性を確保する観点から、そのような制限を受けるファンドや口座において議決権を行使しないことを選択する場合があります。本原則は国・地域によって市場慣習、規制や法律、議案の種類の違いを考慮します。また、個別の課題に応じて、担当アナリストの運用判断も考慮されます。

各種議案に関する当社の原則的な対応は、以下のとおりです。

監査人:客観的で独立性のある監査は、投資家にとって事業の健全性を確認するために重要なものと考えます。監査の質、監査人の客観性に影響を与え得る要素を精査します。通常、投資先企業の監査に係るリスクを低減するため対話を通じて改善を求めますが、状況によっては監査人の選任やその他の議案への反対票を検討する場合があります。

取締役の選任 –当社グループはアクティブ・マネジャーとして、顧客の長期的な利益に資する為、投資先企業への継続的なエンゲージメントを重視しており、議決権行使はそのプロセスの重要な要素の一つです。当社は企業の取締役会が企業の成功に重要な役割を果たすと考えているため、取締役の選任は特に重要です。取締役会には、その信任義務を果たすうえで、株主に対応し、株主の最善の利益のために行動するとともに、企業の経営陣と業務に対して適切な監督権を行使すること等を期待しています。

原則として、企業の取締役候補者の選任を支持します。但し、当該議案への反対が株主の最善の利益になると考える場合や候補者が信任義務を果たしていないと考える場合、企業の候補者のすべて又は一部に反対することがあります。この判断にあたっては、候補者の利益相反の可能性、株主価値の保護や増大に関する実績(現在の取締役会メンバーとして、又は過去の執行役員若しくは取締役として)、また取締役会の業務に専念する各自の余力などを考慮します。

重要な点として、取締役会及び/又は委員会の独立性が各国の現地規制、上場規制、ガバナンス・コードや合理的な株主の期待に準拠していない場合、候補者のすべて又は一部や責任ある委員会メンバーへの反対を検討する場合があります。取締役会が一体として企業の業績と長期的な株主価値増大に対して説明責任を負うことを期待しているため、稀ではあるものの、取締役会がその義務を明らかに果たしていないと考える場合、取締役会全体に反対することもあり得ます。また、監査、報酬又は取締役会の構成など、特定の分野が当社の期待に満たないと考える場合、議長及び関連する委員会のメンバーの選任議案に反対することがあります。

当社グループでは、取締役候補者を個別に評価するだけでなく、取締役会全体としても評価します。取締役会は、全体として、その義務を有効に果たすため、適切な業界知識、スキル、業務経験及び株主に関する理解を有していなければならないと、当社では考えています。これは、幅広い経験を業務に活かすことができる取締役で構成される取締役会であれば、達成される可能性が高まります。また、取締役会メンバーの中での専門知識、性別、そして各国の基準や状況によるものの、人種及び民族の多様性がその意思決定全体の質を向上させると考えています。

独立した取締役会議長/議長とCEOの分離 - 当社グループは、取締役会の独立性が適切なコーポレート・ガバナンスのために不可欠と考えています。独立取締役が取締役会の過半数を占めることに加えて、経営陣に対する監督体制のベスト・プラクティスとして、取締役会議長とCEOの分離、または独立した取締役会議長を置くことが望ましいと考えます。一方で、当社グループは、その他の手段によっても十分な水準の取締役会の独立性及びリーダーシップが達成される場合があることを認識しています。例えば、取締役会が独立筆頭取締役を選任した場合、当該個人の義務や議長/CEOとの関係を精査して、完全な役割分担が確保されるか否かを判断します。取締役会の構造、リーダーシップや全体のガバナンスを個別に分析したうえで、当社グループでは議長とCEOの役割分担を支持するか否かを判断します。

役員報酬 – 役員報酬の承認については、特定の企業における報酬体系や支払金額に対して特段の懸念がない限り、原則として支持します。例えば、当社グループは、短期の企業業績に連動した報酬が役員の報酬全体の3分の1以下で、長期の企業業績に連動した報酬が3分の2以上を占めることが望ましいと考えます。当社が報酬プランに反対したことがある場合や過去数年間にわたり報酬委員会メンバーについての議決権行使を留保していた場合、又は役員報酬方針の一部に満足しない場合、当該企業に対する追加調査を行います。

業績連動報酬のプランは複雑で、評価にあたっては多くの要素が考慮されます。決定要素は一つだけではなく、担当アナリストは、各企業のプランについて、株主利益の保護や企業とその経営陣に関して得た過去の情報を重視します。考慮する要素としては、オプション価格とその変更、希薄化率、長期の企業業績への連動度合い、株式報酬に利用可能な株式の有無などが挙げられます。譲渡制限付株式購入権付与プランの導入ついては、現金給付に代えるもので給付する株式数が過大な水準でなければ、支持します。

社外取締役への株式報酬の付与は、過大な水準でなく、市場価格に基づく等、株主価値に資する設計であれば、原則として支持します。報酬プラン全体として、適格な社外取締役候補を確保し動機づけつつも、その独立性を損なわないことが必要と考えます。

従業員向けに割引価格で自社株を購入でき、節税効果を受けられるような、従業員自社株購入プランについては、原則として支持します。一般的に、市場価格の85%の価格で購入できることが多いです。従業員自社株購入プランのみに限定されていれば、エバーグリーン条項に原則として反対しません。

増資 – 授権株式数の合理的な引き上げについては、企業がその必要性(株式分割や資本増強等)を明確に示している場合、原則として支持します。但し、新規発行株式は株主の持分を希薄化させるため、株式分割の場合を除き、授権株式数を2倍以上に引き上げる提案には原則として反対します。

買収防衛条項 –既存のポイズンピル条項の廃止及び新たなポイズンピル条項の導入に株主の承認を必要とする提案は、原則として支持します。但し、一定の状況下において、企業が買収防衛策を維持する必要性があると考える場合もあります。加えて、企業が株主に配慮したポイズンピル条項を設定している場合、既存の条項を廃止又は変更する株主提案を支持しないことがあります。

伝統的なポイズンピル条項以外の買収防衛条項についてはケース・バイ・ケースで判断します。ただし、原則として、買収防衛条項が買収者を阻害することで、潜在的な株主価値に負の影響がありうることを考慮します。

株主提案:株主提案を精査する際に、個別企業のビジネスモデルや事業環境に応じて、事業や長期的な企業価値に対する重要性を考慮します。運用担当者が長期的な企業価値に影響の大きいリスクや事業機会をより良く理解するために、一般的に透明性を期待します。比較可能な業界における競合他社の動向や一般的なベスト・プラクティスと比較することで、相対的な取組み状況を理解することも議案判断の参考にします。また、このような比較分析をしやすくするためにも、既存の開示規制や業界のベスト・プラクティスを活用した、開示の共通化の進展を支持します。投資先企業の現状の方針、取り組み状況や適応される規制を考慮するものの、一般的に過度に規範的な株主提案は支持しません。株主提案が法的拘束力を持たない場合、提案自体に修正を要するものであっても、提案が当該企業の重要な課題の改善を求めるものであり、また現状の取組みが十分に進展していないと考えられる場合、株主提案に賛成する場合があります。その他、議決権行使原則に沿って、議案判断を行う場合があります。

社会的課題 - 従業員の安全、地域社会への働きかけ、人権(企業のサプライチェーンに関連するものを含む)などの社会的課題は、企業の長期的な成功見込みに影響を及ぼし得る重要な要素であり、関連する株主提案の精査に際して、運用担当者による投資プロセスの一環として調査し、上述のような枠組みに沿って考慮します。

当社グループは概して、経営陣や取締役会を含む企業の職場における人種及び性別に関する平等と多様性は、企業の長期的な価値増大に貢献すると考えています。そのため、各国の基準や慣行に沿って、企業がこれらの価値を促進する戦略や計画を策定することを期待しています。加えて、あらゆる職種及び序列にわたる職場の多様性と平等に関連するデータについて、幅広く適用されている基準(EEO-1、英国の賃金格差レポーティング等)に沿った報告や開示を支持します。また、一般的にEEO-1に沿った情報開示を求める株主提案を支持します。

環境面の課題—当社グループは、個別企業の状況を勘案して、適切に対処されていないと考える企業の事業や業務に与える潜在的なマイナスの影響を含む、環境面の課題(気候変動に関する方針及びレポーティングを含む)を精査します。これらの課題に対する議決権行使判断を決定する際には、企業にとっての課題の重大性、透明性や開示内容の標準化の重要性、株主提案の法的拘束力の有無、同業他社によるベスト・プラクティス、該当するセクターにおけるベスト・プラクティスなどの要素を重視します。

当社グループは概して、環境面の課題は投資においてリスクと機会の双方をもたらし、また企業の財務面での長期的なサステナビリティにつながると考えています。したがって、企業が国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)及び、これに関連しその基礎となる米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)の定める基準や、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組み等の業界基準に沿った開示を行うことを期待しています。また、企業がサステナビリティ報告書を公表することも支持します。一方で、特定の分野のみの専門知識を有する取締役候補者を要求する提案には原則として反対します。それは、上記「取締役の選任」に記載したとおり、個々の取締役の幅広い経験の重要性に加えて、過度に企業の柔軟性を奪うような提案は、企業の有効な監督に必要以上に制約を加えてしまう可能性があると考えるからです。但し、気候関連リスクに特に晒されているセクターの企業で、専門知識を有する取締役がいれば、企業が当該リスクを軽減し、長期的な価値を生み出すことができると考えられるような場合には、当該提案への賛成を検討します。

当社の議決権行使記録

当社が議決権行使権限を有する顧客の運用口座にて保有する証券については、当社は、顧客の要請に応じて、議決権行使結果の報告書を提供します。

議決権行使の結果

国内株式の議決権行使結果は、株主総会の開催時期ごとに個別開示しています。

2024年4月~6月(EXCEL)

2024年1月~3月(EXCEL)

2023年10月~12月(PDF)

2023年7月~9月(PDF)